「お土産は何がいい?」
私は兄に電話で聞いた。
「カナダでしか手に入らないものが良いな」
プレゼントやお土産など他人のために商品を選ぶとことが苦手だから聞いたのに、兄は抽象的なテーマを投げかけてきて、でもまだ選択肢が狭まったから選びやすくはなったけれど、だけど私が陳列棚に並ぶ大量の商品からどれか一つを選ばないといけないことは変わらない。
「難しいよ、具体的なの無いの?」
「じゃあティムハートンのタンブラーが欲しいな」
恐らく兄はティムホートンというカナダ発祥のカフェのことを言ってるのだけれど、映画監督の名前とごちゃ混ぜになっているようで、いつも言い間違える。
「ティムホートンね、わかった」
「ティムホートンか。ありがとう」
真っ赤なボディにTimHortonsと白色で書かれた、カナダの国旗と同じ色彩のタンブラーを購入した。コスト軽減のためなのか薄いプラスチックでかつBIGサイズに作られているから、手に持つと大きさと重さが一致していないような違和感が発生した。
これだけだと物足りないような気がして、近くのショッピングモールへ追加のお土産を買いに向かった。
兄が何を求めているかわからないから、どんなお土産を買えばいいかわからない。私のために考えてくれてることが嬉しいんだよと友人に言われたことがあるけれど、だとすれば何かをプレゼントした時、何をプレゼントしたとしても、果たして同じ反応になるのだろうか。絶対違うと思った。
とりあえずそれっぽいキーホルダーと、カナダの国旗を持ってRootsと書かれた赤い服を着ているビーバーのぬいぐるみを買った。私に明確なrootsがあれば、それを基準に、お土産なんて簡単に選べると思う。ビーバーをルーツとするカナダは、ルーツであるビーバーにカナダの洋服を着せている。
また、日本人というrootsを持って外国で生活することに所在のなさのような違和感は発生するのだろうか。妹からもらったビーバーのぬいぐるみを見て、そんなことを考えていた。
「Rootsっていうお店で買ったの」
妹が言った。
「あ、そうなんだ」
考え事をしていたから、妹が家族と話している内容を聞きそびれたようだったけれど、その一言だけは聞き取ることができた。